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ラオス経済の真実|ポテンシャルと深刻な債務リスクを徹底解剖

ラオスの経済ポテンシャル分析

ラオスの経済ポテンシャル分析

人口の少なさを超える、隠れた成長ドライバーを探る

イントロダクション:内陸国の新たな可能性

ラオス人民民主共和国は、約775万人の人口とASEAN唯一の内陸国という地理的条件から、経済発展のポテンシャルが限定的と見なされがちです。しかし、その見方は表面的なものに過ぎません。

近年、ラオスは「東南アジアのバッテリー」としての水力発電、中国とASEANを結ぶ「陸のリンク」としての物流拠点化など、人口規模に依存しない独自の強力な成長ドライバーを次々と獲得しています。

このインタラクティブレポートでは、ラオスが秘める巨大な経済ポテンシャルを多角的に分析すると同時に、巨額の公的債務やインフレといった深刻な課題にも焦点を当てます。データと解説を通じて、この国の複雑でダイナミックな経済の現状と未来像を探ります。

一人当たりGDP

約2,067ドル

(2023年)

実質GDP成長率

3.7%

(2023年)

主要輸出品目

電力・鉱物

全輸出額の約半分を占める

ポテンシャルの源泉

ラオスの経済は、国内市場の大きさではなく、そのユニークな地理的条件と天然資源を最大限に活用することで成長の活路を見出しています。以下の項目をクリックして、各成長ドライバーの詳細をご覧ください。

🔋 エネルギー

「東南アジアのバッテリー」としての水力発電。

🚆 ロジスティクス

「陸のリンク」へ変貌させる中国ラオス鉄道。

⛏️ 天然資源

銅や金などの鉱物と、高品質な農産物。

🏞️ 観光業

手つかずの自然と文化遺産が魅了。

克服すべき課題

大きなポテンシャルを秘める一方で、ラオス経済は深刻なマクロ経済の不均衡に直面しています。特に、持続不可能なレベルに達している公的債務と、国民生活を圧迫する高インフレは、将来の成長を阻害しかねない最大の懸念材料です。

公的債務問題

大規模インフラ開発、特に電力事業や中国ラオス鉄道に関連する借入が急増。IMFや世界銀行は「過剰債務」状態にあると警告しており、デフォルト(債務不履行)のリスクが懸念されています。

高インフレと通貨安

対外債務の返済や輸入依存度の高さから外貨準備が不足し、自国通貨キープの価値が急落。これが輸入物価の高騰を招き、一時は40%を超えるハイパーインフレを引き起こしました。

産業の多様化と人材育成

経済が電力と鉱物資源という特定のセクターに過度に依存しているため、国際市況の変動に弱い構造となっています。

持続的な成長のためには、農業の高付加価値化や製造業、ITサービスなど、新たな産業の育成が急務です。しかし、それを担うための専門知識や技術を持った人材が不足しており、教育システムの強化と職業訓練の充実が不可欠な課題となっています。

結論:課題と可能性の狭間で

ラオス経済は、「人口が少ないからポテンシャルが低い」という単純な見方を覆す、ユニークで強力な成長エンジンを複数持っています。水力発電によるエネルギー供給、中国とASEANを繋ぐ物流ハブ化は、この国の未来を大きく左右する可能性を秘めています。

しかし、その輝かしい未来への道のりは平坦ではありません。

持続不可能なレベルに達した公的債務と高インフレは、経済の安定を根底から揺るがす時限爆弾のような存在です。これらのマクロ経済問題を解決し、債務の罠を回避できるかどうかが、ラオスの将来を決定づける最大の分岐点となるでしょう。

ラオスのポテンシャルを最大限に引き出すためには、国際社会との協調による債務再編、国内の産業多様化、そして未来を担う人材への投資が不可欠です。困難な課題を克服した先に、ラオスが東南アジアの新たな成長センターとして躍動する未来が待っているかもしれません。

ラオス経済発展のポテンシャル分析

エグゼクティブサマリー

本報告書は、ラオス人民民主共和国(以下、ラオス)の経済発展の潜在能力について、包括的かつ多角的な分析を提供するものである。

現在のラオス経済は、重大なパラドックスに直面している。

エネルギー、物流、観光といった戦略的分野における具体的かつ大きな潜在能力が、深刻なマクロ経済危機によって著しく損なわれているのである。

この危機は、持続不可能な水準に達した公的債務、根強いインフレ圧力、そして人的資本の空洞化という三つの主要な課題によって特徴づけられる。

2024年のラオス経済は、サービス業や電力輸出に牽引され、4.1%という底堅い成長を示したものの、この成長は国民生活の向上に必ずしも結びついていない。

高インフレと通貨キープ安が家計の購買力を蝕み、国内消費を冷え込ませているからだ。

特に深刻なのは、GDP比で100%を超える公的債務であり、その返済負担が保健・教育といった未来への投資を圧迫し、国家の長期的生産性の基盤を揺るがしている。

一方で、ラオスには光明も存在する。

「東南アジアのバッテリー」構想を掲げる豊富な水力発電能力、内陸国から陸続きの連結国へと変貌させる中国ラオス鉄道の開通、そして「Visit Laos Year」キャンペーンの成功に見られる観光業の目覚ましい回復は、新たな成長軌道を描くための強力なエンジンとなりうる。

農業や鉱業もまた、重要な外貨獲得源として経済のレジリエンスを支えている。

しかし、これらの潜在能力を最大限に引き出すためには、目前の危機を乗り越えるための断固たる改革が不可欠である。

本報告書の結論として、ラオスの進むべき道は険しいものの、包括的な改革アジェンダを通じてその潜在能力を解き放つことは依然として可能であると指摘する。

そのための戦略的必須事項は、第一に、債務再編を含むマクロ経済の安定化を最優先で達成すること。

第二に、鉄道インフラを最大限に活用し、資源輸出依存から脱却するための多角的な成長戦略を推進すること。

第三に、人的資本への投資を再開し、労働力流出に歯止めをかけることである。

決定的な行動を起こすための時間は限られており、今こそがラオスの未来を左右する岐路である。

第1章 マクロ経済のるつぼ:不安定性の克服と均衡の模索

ラオスの経済的潜在能力を論じる上で、その前提となるのは、同国が直面している深刻かつ複雑なマクロ経済の課題である。

これらは単なる景気循環的な落ち込みではなく、もし断固として対処されなければ、国の発展を停滞させる「失われた10年」をもたらしかねない、根深い構造的問題である。

1.1. 不安定の中での成長:脆弱な回復

ラオス経済は、困難な状況下でも一定の回復力を示している。

2024年の実質GDP成長率は、サービス業(観光、運輸)、電力、鉱業、農業、製造業の好調に支えられ、4.1%に達した。

特に、2024年には海外からの観光客到着数が21%増加し、サービス部門の成長を力強く後押しした。

しかし、この成長の勢いは持続可能とは言えず、2025年の成長率は3.5%から3.9%へと鈍化すると予測されている。

国際通貨基金(IMF)はさらに悲観的で、2.5%という低い成長率を見込んでいる。

この成長は、購買力の低下、高い事業コスト、労働力不足といった深刻な逆風の中で達成されたものである。

政府の第9次国家社会経済開発5カ年計画(NSEDP、2021−2025年)では、年平均4%以上の成長が目標とされているが、同時に厳しい財政制約から高い成長率の達成は困難であることも認識されている。

この状況は、GDPのヘッドライン数値と、国民や中小企業が体感する経済実態との間に大きな乖離があることを示唆している。

データが示すように、成長を牽引しているのは観光、電力、鉱業、運輸といった、主に輸出志向または外部需要に依存する資本集約的なセクターである。

その一方で、通貨キープの価値下落と高インフレが実質賃金を切り下げ、国民の購買力を著しく低下させている。

キープの並行市場レートが対米ドルで1%下落するごとに、個人消費は推定0.6%減少するという分析もある。

世界銀行の家計調査では、約3分の1の世帯が食料、保健、教育といった必要不可欠な支出を削減していることが明らかになっており、この苦境を裏付けている。

したがって、現在のGDP成長は、広範な国民の豊かさには結びついていない。

それは特定の外需依存セクターの業績を反映しているに過ぎず、国内経済、特に中小零細企業(MSME)や一般家庭が直面する深刻な経済的苦痛を覆い隠している。

これは包摂的な成長とは言えず、社会の安定と長期的な貧困削減に対するリスクを内包している。

ラオスの主要マクロ経済指標(2023-2026年予測)

指標 2023年 2024年 2025年(予測) 2026年(予測)
実質GDP成長率 (%) 3.7 4.1 2.5 (IMF), 3.5 (WB), 3.9 (ADB) 4.0 (ADB)
平均インフレ率 (%) 31.2 23.3 9.4 (IMF), 13.5 (ADB) 10.4 (ADB)
公的債務 (対GDP比, %) 116 99 91.4 -
経常収支 (対GDP比, %) 2.7 - −0.1 -

注:2025年の予測値は機関によって異なる。公的債務の数値は、滞納金やスワップ協定を含む場合がある。

1.2. 債務の重圧:持続不可能な負担と再編の模索

ラオスの経済的潜在能力を著しく阻害している最大の要因は、その持続不可能な公的債務である。

世界銀行は、公的及び公的保証債務(PPG)を「持続不可能なほど高い」と評価しており、滞納金やスワップ協定を含めると、2023年末時点でGDPの116%に達した。

2024年にはGDP比99%に低下したと推定されるが、これは名目GDPの成長と債務返済の繰り延べによるものであり、根本的な財務状況の改善を意味するものではない。

ラオスは公式に「債務危機(debt distress)」の状態にあるとされている。

現状、ラオスは債務返済の繰り延べに大きく依存しており、その額は2023年末までにGDPの約16%に相当した。

もしこの繰り延べがなければ、2025年から2027年にかけて、対外債務返済額は年間平均で13億米ドルという莫大な額に達すると予測されている。

特に2025年は返済のピークを迎える年となる。

この債務の約半分は中国に対するものである。

この債務繰り延べへの依存は、短期的な流動性危機を回避するための対症療法に過ぎず、根本的な支払い能力(ソルベンシー)の問題を解決するものではない。

世界銀行が明確に指摘するように、繰り延べは「短期的に外貨需要への圧力を軽減するが、長期的な支払い能力を提供するものではない」。

債務返済が2025年にピークを迎えるという事実は、問題が先送りされているだけで、解決されたわけではないことを示している。

このような単一の主要債権国(中国)からの場当たり的な繰り延べへの依存は、非対称的な権力関係を生み出す。

これにより、ラオスの財政の安定は、IMFプログラムのような予測可能でルールに基づいた枠組みではなく、中国政府の政治的・経済的な思惑に左右されることになり、国家の経済主権を脅かす。

この不確実性は、他の形態の投資を妨げ、政府が特に社会セクターにおいて信頼性のある中期的な財政計画を立てることを不可能にする。

信頼できる債務再編計画の欠如が、持続可能性を回復する上での最大の障壁となっているのである。

1.3. インフレの螺旋:原因、影響、そして政策対応

債務問題と密接に関連し、国民生活を直撃しているのが、高インフレである。

2023年には31%を超えるピークに達した後、インフレ率は鈍化したものの、依然として二桁台で推移している。

2025年3月時点で11.2%であり、年内は二桁台が続くと予測されている。

この高インフレの最大の要因は、通貨キープの急激な下落である。

2024年1月から9月にかけて、キープは対米ドルで公定レートで19%、並行市場レートでは28%も下落した。

この通貨安は、外貨不足によってさらに悪化している。

2024年上半期には、公式の輸出収益のうち、国内の金融システムに還流したのは約65%に過ぎなかった。

これに対し、政府と中央銀行は金融引き締めや財政健全化といった政策で対応し、2024年半ば以降、為替レートの安定化に一定の効果を上げている。

しかし、この持続的な高インフレは、単なる経済指標の悪化にとどまらず、ラオス社会とその労働市場を根底から変容させる強力な力となっている。

名目賃金は13%上昇したものの、インフレを考慮した実質賃金は2024年に3.9%減少した。

これに対応するため、家計は経済活動のパターンを劇的に変化させている。

自営業者の割合は、2023年1月の29%からわずか1年後の2024年1月には45%へと急増した。

労働者はサービス業から農業へとシフトしている。

さらに、より良い機会を求めて国外への労働移動が加速しており、2025年1月の調査で報告された移民のうち、3分の1が2024年に出国していた。

海外からの送金は家計にとって不可欠な生命線となっており、送金を受け取る世帯では、その額が年間最低賃金の76%に相当する。

これらは健全でダイナミックな経済の兆候ではなく、深刻なストレス下にある社会の姿を映し出している。

自営業へのシフトは、より生産性の低いインフォーマルな労働への移行を示唆している可能性があり、労働移動は国家の頭脳流出を意味する。

食費高騰に対処するために貯蓄や資産を取り崩す動きは、将来の危機に対する家計の脆弱性を高めている。

1.4. 財政的制約と公共サービスの侵食

歳入徴収の改善努力にもかかわらず、ラオスの財政余地は、増大する債務の利払いによって著しく制限されている。

財政の安定化は、主に保健、教育、社会保障といった国民生活に不可欠な公共支出を抑制することによって達成されてきた。

現在、保健・教育分野への支出がGDPに占める割合は、2013年の約半分にまで落ち込んでいる。

アジア開発銀行(ADB)のデータによれば、これらの分野への支出は2013年のGDP比4.9%から2024年には推定2.3%にまで減少した。

この支出削減は、学齢期の子供の退学率の上昇や、人間開発指標の停滞といった、具体的な社会的悪影響をもたらしている。

これは、債務危機が直接的に人的資本の危機を誘発していることを意味する。

債務管理のために必要とされる財政緊縮が、保健と教育への体系的な投資不足を引き起こし、ラオスは将来の生産性と競争力を犠牲にして、目先の債務返済義務を果たしているのである。

高い債務返済コストが、他の不可欠な政府支出を締め出している。

この投資不足は、中等教育の退学率が2020年の4.7%から2023年には11.5%へと倍増し、食料不安が蔓延するなど、測定可能な負の結果を生んでいる。

世界銀行とADBは共に、これが労働力の長期的生産性を危険に晒すと明確に警告している。

したがって、債務危機は単なる金融問題ではない。

それは、将来の経済成長のまさに基盤であるラオス国民のスキルと幸福を積極的に蝕んでいる。

これにより、長期的には債務の罠から抜け出すことが一層困難になるという悪循環が生まれている。

第2章 潜在能力の柱:新たな成長軌道への触媒

本章では、ラオスの経済的な未来にとって最も有望な主要セクターと戦略的資産を分析する。

その巨大な潜在能力を浮き彫りにすると同時に、関連するリスク、依存関係、そして成功のために必要な条件を批判的に検証し、バランスの取れた評価を行う。

2.1. 「東南アジアのバッテリー」:水力発電の潜在能力活用とリスク緩和

水力発電はラオス経済の礎である。

電力は同国最大の輸出品目であり、2023年には23億8000万米ドルの輸出額を記録した。

ラオスは、メコン川本流を除いても18,000 MWを超える膨大な水力発電ポテンシャルを有している。

政府は、発電能力を2025年までに12 GW、2030年までに20 GWに増強し、タイへ9 GW、ベトナムへ5 GWという野心的な輸出目標を掲げている。

現在、発電された電力の80%以上が輸出されている。

しかし、この戦略は重大なリスクを伴う。

第一に、気候変動による干ばつは水力発電の信頼性を揺るがす。

第二に、メコン川上流における中国のダム管理は、地政学的なリスクとなる。

第三に、地域の電力価格変動への経済的エクスポージャーが大きい。

さらに、水力発電は政府歳入のわずか2%しか占めておらず、長期的なコンセッション契約など、歳入モデルに課題があることを示唆している。

そして何より、このセクターへの過剰投資が、国の巨額な債務負担の主因となっている。

ここには、「東南アジアのバッテリー」戦略の根源的なパラドックスが存在する。

電力輸出は莫大な総収益を生み出し、GDP成長の主要な牽引役である一方で、政府の直接的な歳入への貢献はごくわずかであり、かつ国家の債務危機の主因となっている。

これは、建設・運営・譲渡(BOT)方式などの長期コンセッション契約の下で、金融的利益が主に海外の投資家や金融機関に帰属し、ラオス国家が不相応な債務とリスクを負担する開発モデルが採用されていることを示唆している。

電力は最大の輸出品目であるにもかかわらず、政府歳入への貢献はわずか2%に過ぎない。

同時に、主に中国からの融資によるエネルギー分野への無計画な投資が債務危機の主因と特定されている。

つまり、国家は多額の借金をして資産を建設したが、その資産から得られる収益が、債務を返済するための歳入として国家に還流していないのである。

この戦略は輸出の創出には成功したが、財政強化の手段としては失敗したと言える。

2.2. 内陸国から連結国へ:中国ラオス鉄道の変革的影響

総工費59億米ドルの中国ラオス鉄道は、中国の「一帯一路」構想の旗艦プロジェクトであり、その経済的影響はすでに顕在化している。

この鉄道は、首都ビエンチャンと中国国境間の輸送時間を劇的に短縮し、陸上輸送コストを40-50%削減する可能性がある。

開業から3年間で、旅客輸送数は4300万人以上、貨物輸送量は4830万トン以上に達した。

特にラオス国内区間では、2024年に旅客数が前年比45%増の377万人、貨物輸送量が478万トンに達し、観光業と貿易の活性化に大きく貢献している。

世界銀行は、ラオス政府が補完的な改革を実施すれば、この鉄道は長期的にラオスの総所得を最大21%押し上げる可能性があると試算している。

しかし、このプロジェクトはラオスの債務負担を大幅に増加させており、その恩恵が公平に分配されず、地元の企業が外国の競合他社に圧倒されるのではないかという懸念も根強い。

中国ラオス鉄道:主要な運営統計と経済的影響の予測

指標 数値
総工費 59億米ドル
開業以来の総旅客数(全線) 4300万人以上
開業以来の総貨物輸送量(全線) 4830万トン以上
2024年 旅客数(ラオス区間) 377万人(前年比45%増)
2024年 貨物輸送量(ラオス区間) 478万トン(前年比16.3%増)
輸送コスト削減効果(推計) 40−50%(ビエンチャン-昆明間)
長期的所得増加効果(推計) 最大21%

この鉄道は、ラオスの未来の成長にとって最大の資産であると同時に、中国への経済的・地政学的依存を深める強力な媒介でもある、まさに「諸刃の剣」と言える。

物理的にはラオスを地域のサプライチェーンに統合するが、その成功は、現在海上ルートが主流である中国・ASEAN間の通過貿易を鉄道にシフトさせるという壮大な課題にかかっている。

この鉄道プロジェクトの資金調達構造(中国とラオスの70対30の負担割合)と関連融資は、ラオスに重い負担を強いている。

地元の利害関係者は、より資本力と経験を持つ外国企業(主に中国企業)との競争に敗れることへの懸念を表明している。

したがって、この鉄道がラオスを繁栄する陸上連結ハブに変えるか、それとも重債務を抱える通過回廊にしてしまうかは、ラオス政府が貿易円滑化、物流改善、事業規制の簡素化といった「ソフトインフラ」改革を断行し、付加価値を国内で確実に確保できるかどうかにかかっている。

物理的なインフラだけでは不十分なのである。

2.3. 観光業の再興:自然・文化遺産の活用

観光セクターは、近年の経済回復における主要な牽引役である。

「Visit Laos Year」キャンペーンは、ビザ免除措置や鉄道によるアクセス向上と相まって大きな成功を収めた。

2024年の国際観光客到着数は、前年比21%増の412万人に達し、11億3000万米ドル以上の収益をもたらした。

主要な観光客源はタイ(120万人)、ベトナム(105万人)、中国(104万人)であった。

特に中国ラオス鉄道は、ルアンパバーンやバンビエンといった主要観光地へのアクセスを飛躍的に向上させ、観光客誘致の重要な要素となっている。

政府の第9次NSEDPも観光開発を優先事項と位置づけ、5年間で1500万人の観光客誘致を目標としている(ただし、これは新型コロナウイルス禍からの回復状況に依存する)。

観光業は、地域社会やMSMEに直接的な利益をもたらし、真に包摂的で雇用創出効果の高い成長を実現する可能性を秘めた数少ないセクターの一つである。

しかし、この大きな可能性は、前述の人的資本の危機によって直接的に脅かされている。

マクロ経済の不安定さが引き起こす労働力不足、スキルギャップ、そして国外への労働移動は、拡大する観光セクターに質の高いサービスを提供するために必要な労働力が国内に存在しないという事態を招きかねない。

観光サービスへの需要が高まる一方で、資格を持つ国内労働者の供給が減少するという矛盾が生じているのである。

このままでは、外国人労働への依存度が高まり、セクターの成長と付加価値創出の上限が低くなる恐れがある。

ラオスが観光の潜在能力を最大限に活用するためには、労働移動の根本原因に対処し、ホスピタリティ分野の職業訓練とスキル開発に緊急に投資する必要がある。

2.4. 資源の恵み:持続可能な収益に向けた農業と鉱業の近代化

農業と鉱業は、共にラオスの経済成長と輸出に大きく貢献している。

農業セクターは高い強靭性を示し、2023年には14億米ドル以上の輸出額を記録した。

主要な輸出作物はキャッサバ、ゴム、コーヒー、バナナ、サトウキビであり、中国が最大の輸出市場となっている。

特にキャッサバは、2024年1月だけで9400万米ドルの輸出額を記録するなど、重要な作物となっている。

鉱業セクターもまた、経済成長の重要な牽引役である。

金、鉄鉱石、カリウム塩といった鉱物資源は、国の主要な外貨獲得源の一つである。

例えば2023年には、金地金の輸出額が7億3000万米ドル、金鉱石が4億2500万米ドル、鉄鉱石が4億1100万米ドル、カリウム塩が4億100万米ドルに達した。

ラオスの主要輸出品目と主要貿易相手国(2023年)

品目 2023年輸出額(米ドル) 主要輸出先
電力 23億8000万 タイ, ベトナム
金地金 7億3000万 -
紙・紙製品 4億6700万 -
金鉱石 4億2500万 -
鉄鉱石 4億1100万 -
カリウム塩 4億100万 -
キャッサバ 3億3300万 中国, ベトナム
ゴム 3億1000万 中国
パルプ・古紙 2億8400万 -
バナナ (主要輸出品) 中国

これら資源セクターは、マクロ経済危機の中でラオス経済に不可欠な緩衝材を提供し、重要な輸出収入源となってきた。

農業セクターは、危機下で他のセクターから流出した労働力の受け皿ともなった。

しかし、これらのセクターが単一市場(中国)と未加工または低付加価値産品の輸出に大きく依存していることは、深刻な脆弱性を生み出している。

中国は、農産物と鉱物資源の両方にとって最大の輸出先であり、一説にはラオスの農産物輸出の80%以上を占めている。

この市場集中は、中国経済の減速、輸入基準の変更、あるいは貿易の政治的利用といった外的ショックに対してラオス経済を極めて脆弱にする。

したがって、輸出市場の多角化(例えば、鉄道を利用して中国経由で欧州市場を目指すなど)と、製品の高付加価値化(食品加工や鉱物精錬への投資)は、より強靭で収益性の高い資源セクターを構築するための戦略的必須事項である。

第3章 構造的弱点:発展を阻むブレーキへの対処

本章では、目先の危機を超えて、ラオスの発展を長年にわたり制約してきた根深い構造的障害を分析する。

これらの根本的な問題に対処しない限り、いかに有望な成長機会であっても、持続可能で包摂的な繁栄をもたらすことはできない。

3.1. 人的資本の欠如:労働力不足、移民、そして人への投資不足

人的資本の欠如は、ラオスが直面する最も深刻かつ分野横断的な課題である。

世界銀行は、労働力不足が民間企業にとって最大の制約であると指摘している。

より良い機会を求めて労働者が国外に流出することで、国内の労働力は縮小し続けている。

これは、近年の財政緊縮によってさらに悪化した、保健と教育への慢性的な投資不足の直接的な結果である。

これらのセクターへの公的支出の対GDP比は、2013年以降半減した。

この投資不足は、中等教育の退学率の上昇(2023年には11.5%)、教員不足、そして低い学習成果といった具体的な問題を引き起こしている。

2025年1月の世界銀行の調査では、低所得世帯の学齢期の子供の11.4%が学校に通っていないことが判明した。

人的資本指標:ラオスと国際平均の比較

指標 ラオス 世界/地域平均
公的教育支出(対GDP比) 1.2% (2024年) 4.6% (世界中央値, 2023年)
公的保健支出(対GDP比) 約1.0% (2017年以降) 6.1% (世界中央値)
中等教育退学率 11.5% (2023年) (比較データなし)
食料不安(中度~重度) 人口の30% (比較データなし)

この状況は、ラオスが自国の最も価値ある資産、すなわち「人材」を輸出しているに等しい。

インフレによって蝕まれた低い国内賃金、機会の欠如、そして資金不足の社会サービスが組み合わさり、ラオスの労働者が国外(特にタイ)へ移住する強力なインセンティブを生み出している。

これは、国の現在および未来の労働力の大規模な流出であり、成長する観光業へのサービス提供から、熟練した製造業基盤の育成に至るまで、国のあらゆる開発ポテンシャルを直接的に損なうものである。

実質賃金が低下し、機会が乏しい中で、スキルと幸福を育むシステム(教育、保健)への投資が崩壊している。

その直接的な結果として、41万5000人を超える国民が国外で働いている。

これは、企業が労働者を見つけられず、成長が抑制され、賃金が低迷し、さらなる移住を促すという負のフィードバックループを生み出す。

第9次NSEDPは人的資源開発を重要な「突破口」と位置づけているが、現在の財政政策は正反対の結果をもたらしている。

国は人口ボーナスを活かすことに失敗し、「人口損失」のリスクに直面しているのである。

3.2. 民間セクターの圧迫:MSMEの課題と事業環境

ラオスでは、中小零細企業(MSME)が企業の大多数を占め、雇用の中心的な担い手となっている。

しかし、これらのMSMEは深刻な課題に直面している。

最大の制約は資金調達へのアクセスであり、担保、金融リテラシー、そして正式な事業構造の欠如がその背景にある。

この問題は、政府による国内借入の増加によってさらに悪化している。

政府の借入が、民間企業、特に中小企業が利用できるはずの信用(クレジット)を「クラウドアウト(締め出し)」しているのである。

加えて、煩雑な規制や手続きが事業コストを押し上げ、生産性を阻害していることも、事業環境を悪化させる要因となっている。

これは、政府の財政危機が、ラオス国民の雇用の主要な源泉である民間セクター、特にMSMEを直接的に窒息させていることを意味する。

持続不可能な対外債務に直面した政府が、財政赤字と債務をファイナンスするために限られた国内の信用を吸収することで、経済の中で最もダイナミックで雇用創出能力の高い部分への資本の流れを妨げている。

これは、経済の多角化を担うべき強固な国内民間セクターの育成を阻む、致命的な構造的欠陥である。

国家の財政問題が民間セクターに直接転嫁されているのである。

これは単に事業環境が厳しいという問題ではなく、雇用創出のエンジンから必要な燃料(信用)を奪い、経済を低成長・低雇用の罠に閉じ込める体系的な金融の圧迫である。

3.3. 中国との関係:経済的依存の複雑性

中国は、ラオスにとって最大の外国投資国であり、タイと並ぶ最大の貿易相手国であり、そして最大の債権国である。

ラオスの対外債務の約半分は中国が占め、外国直接投資(FDI)流入の60%以上を中国が占め、農産物輸出の80%以上が中国向けである。

「一帯一路」構想、特に中国ラオス鉄道は、ラオスの開発戦略の中核をなしている。

この深い関係は、不可欠な資本とインフラを提供する一方で、ラオスが中国の「属国」となり、債務の罠に陥っているとの批判も生んでいる。

興味深いことに、近年の調査ではラオス国内の対中認識に変化の兆しが見られる。

中国の経済的影響力に対する懸念が高まる一方で、欧州連合(EU)やオーストラリアといったミドルパワーとの関係強化を望む声が増えているのである。

シンガポールのISEASユソフ・イサーク研究所が実施した「東南アジアの現状調査」によると、ラオスにおいて中国を最も影響力のある経済大国と見なす回答者の割合は、2022年の86.4%から2023年には20.6%へと劇的に低下した。

また、米国と中国のどちらかを選ばなければならないという仮説の質問に対して、2023年には初めて米国を選ぶ回答者が中国を選ぶ回答者を上回った。

このデータは、中国への構造的依存が否定できない事実である一方で、ラオス国内で戦略的な再調整の動きが生まれていることを示唆している。

債務危機や一部の「一帯一路」プロジェクトの恩恵の偏りといった負の側面が、ラオスの経済的・戦略的パートナーシップを多角化し、バランスを取る必要性への認識を育んでいる。

これは中国からの離反を意味するものではなく、それは不可能である。

むしろ、圧倒的な対中依存を相殺し、ある程度の自律性を取り戻すための、巧妙かつ必要な外交・経済政策への転換、すなわち「ヘッジング」の必要性が高まっていることを示している。

この静かだが重要な力学の変化は、今後のラオスの発展の方向性を占う上で極めて重要である。

第4章 戦略的必須事項:ラオスの経済的潜在能力を解き放つための青写真

本章では、これまでの分析を統合し、一貫性のある実行可能な一連の戦略的提言を提示する。

ここでは、他のすべての開発努力の絶対的な基盤としてマクロ経済の安定化から始める、段階的かつ多角的なアプローチが必要であると論じる。

4.1. マクロ経済の安定化:交渉の余地なき前提条件

経済を安定させるために緊急に必要とされる改革は、世界銀行やADBの提言に基づき、以下の通りである。

これらは、持続可能な成長への道を切り開くための交渉の余地のない前提条件である。

  • 債務管理
    短期的な返済繰り延べに依存する現状から脱却し、持続可能性を回復するための包括的かつ信頼できる債務再編計画を追求することが最も重要である。
  • 財政健全化(歳入面)
    外貨流入をも制限している外国投資への税制優遇措置や免除を抑制することで、課税ベースを拡大する。アルコールやタバコなどへの新たな物品税を導入し、歳入を確保する。税務行政と徴収効率を強化する。
  • 金融・為替レート政策
    インフレ期待を抑制し、通貨キープを支えるため、引き締め的な金融政策を継続する。輸出収益の国内還流に関する規制を徹底し、外貨流動性を改善する。

4.2. 多角的な成長戦略:資源採掘からの脱却

既存の資産をより持続可能で包摂的な成長のために活用するための戦略は、以下の通りである。

  • 「陸上連結」の利益最大化
    中国ラオス鉄道が単なる通過回廊ではなく、真の物流ハブとしてラオスの地元企業に利益をもたらすよう、事業登録・許認可の簡素化、貿易円滑化の推進、物流サービスの向上といった補完的な「ソフトインフラ」改革を実行する。
  • 付加価値の創出
    未加工の一次産品を輸出するモデルから、農業(キャッサバ粉、加工コーヒーなど)や鉱業における国内の加工能力を育成する方向へと重点を移す。これにより、より多くの付加価値を国内に留保し、雇用を創出することが可能となる。
  • 持続可能な観光
    観光業の魅力の基盤である自然資産を保護し、その利益が地域社会に還元されることを確実にするため、質の高い持続可能なエコツーリズムや文化観光に焦点を当てた国家戦略を策定する。

4.3. 未来への投資:人的資本への新たなコミットメント

社会支出の減少傾向を反転させることは、不可欠な経済投資として位置づけられるべきである。

  • 公共支出の優先順位見直し
    歳入改革と債務再編によって財政余地が生まれた際には、即座に保健、教育、社会保障への支出を最優先事項として再配分する。これは、あらゆる新たな財政枠組みの中核的な条件でなければならない。
  • 的を絞った介入
    貧困家庭への的を絞った経済支援を通じて、学齢期の子供の退学率を低下させることに注力する。スキルミスマッチに対処するため、成長する観光、物流、製造業のニーズに直接的に合致した職業技術訓練への投資を強化する。
  • 頭脳流出の阻止
    競争力のある国内雇用市場の創出や労働条件の改善を含め、熟練労働者の国内定着を促し、移民労働者の帰国を奨励する政策を策定する。

4.4. 政策・ガバナンス改革:包摂的成長のための環境整備

経済戦略を支えるために不可欠なガバナンス改革は以下の通りである。

  • 公共投資管理の改善
    コンセッションや契約に対する競争入札を導入し、国有企業(SOE)の経営を改善することで、政府の偶発債務の発生を抑制し、公共支出の効率性を高める。
  • 金融セクターの強化
    銀行セクターの脆弱性に対処するとともに、マイクロファイナンス機関を支援し、中小企業に適した革新的な金融商品を創出することで、MSMEへの資金アクセスを拡大する。
  • 透明性とガバナンスの向上
    投資家の信頼を醸成し、汚職を減少させるため、公的債務や投資許認可の透明性を向上させる。

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管理人:OKIHIRO

ラオスに沈没中の旅人。ラオスに沈没して、はや数年。旅人目線で感じたラオスの魅力や、ちょっと変わった日常を綴っています。ラオスの「リアル」に興味がある方は、ぜひ覗いてみてください。

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